建物構造対決 Episode3.進化を止めない木造の逆襲|株式会社R-JAPAN
建物構造対決 Episode3.進化を止めない木造の逆襲
建物構造対決Episode3.
進化を止めない木造の逆襲
皆さんは木造住宅に持つ印象はどんな印象をお持ちでしょうか?
私個人的には戸建住宅が好きな方が最終的に木造住宅の柔らかさを求められるのかなぁ。という印象を持っています。
総務省の統計調査においても戸建全体の約9割を木造住宅(耐火構造物件を含みます)が占めているようです。
最近は軽量鉄骨やプレハブユニット、ヘーベル住宅等多種多様な建物構造があり非木造住宅が増えている印象もありますが、統計的には今でも戸建物件に関しては木造が主流だと言えそうです。
多種多彩な建材を使い、本来、木が持つ柔らかさを表現し、住む人に長く愛される住宅が木造の一番の魅力かなぁ。と言えるのではないでしょうか。
ただ、最近では輸入材に頼っているので昨今のウッドショックの影響で、供給数と価格の高騰が心配ではありますが…。
また皆さんが持つ木造のイメージは先のRC造や鉄骨造と比べれば非力な弱さがあるように感じる方もいらっしゃるかと思いますが、昨今木造が見直されている事実をご存知でしょうか?
実は、ここに来て木造の逆襲が始まっています。
今回は、木造住宅のメリットデメリットから話していきます。そして最後に木造の逆襲をお楽しみください。
木造のメリット・デメリット
○メリット
- ①設計の自由度が高い
- 木造の魅力は何と言っても設計の自由度が高いところだと思います。
基本的にはシンプルな構造なので、簡単に言いますと基礎、土台、柱、梁という構造体が建築基準法に沿って満たしていれば、その他の設計の自由性は鉄骨造やRC造の自由性を上回ります。と、同時にシンプル構造が将来のリフォームにおいても効果を発揮してくれるので、例えばお子様の成長に合わせて間取変更が容易になったり、リビングダイニングの一体化でデッドスペースを無くすことができます。
このメリットが今なお木造人気をけん引しているような気がします。 - ②調湿効果がある
- 木は建材となった製材状態でも水分を蓄えています。それにより例えば、室内の空気が乾燥状態になれば、建材に蓄えられていた水分を空気中に放出し、乾燥の抑制効果を発揮したり、多湿の季節には、空気中の水分を建材が吸い込み、湿気を緩和させるので、比較的結露やカビの発生を抑えることができます。
ここに壁をクロス張りではなく珪藻土で施工すれば、なおその効果はアップします。 - ③断熱性が高い
- 住宅建材で採用されることが多いヒノキやスギ、仕上げ材のブナ等の木材は、コンクリートや鉄と比較して高い断熱性を持っています。
最近では接続部分の隙間を埋めるべく高精度の建築部材や断熱材を使って、高気密・高断熱住居を謳っているハウスメーカーさんも多くなりました。 - ④実は耐火性に優れています
- 建材に採用される木は元々太い木が多く、木の内部の含水率が多いこともあり熱伝導率が基本的に低く、木の内部まで燃えるのに時間を要します。
また炭状になる炭化になるのも特徴で、火災を起こしても躯体が残りますので構造体の中心部が保存され、家の形状はそのまま保たれることが多いです。 - ⑤建築コストが抑えられる
- あくまでも鉄骨系と比較しての話しですが建築コストは今回の3者対決では一番低いです。
ただ、昨今のウッドショックや施主様のオプションや個別オーダーや木の種類によって坪単価は異なります。例えば樫の木で無垢のフローリングで施工すれば、それだけでかなりの高額になります。 - ⑥落ち着きのある空間
- これは個人差があるので、メリットです!とは言えませんが自然の素材で作り上げた空間には飽きない落ち着きや居心地の良さがあります。
木のぬくもりや柔らかさを求める方には重要な要素かと思います。
△デメリット
- ①強度と耐久性が低い
- 鉄骨系と比較して強度や耐久性は圧倒的に低いです。
よって一般的には、耐震面においては古い木造住宅ほどメンテナンスと住み方対策を講じなければなりません。
地震大国なのに、この木造に人気があるのは?謎ですね… - ②施工と仕上がりにバラツキがある
- 設計の自由さが招くことが多いのかも知れませんが、一般的には新築木造建築の場合、木材を現場に搬入し、その場で組み上げて建てます。
設計によっては木材を工場で加工しないで(できない場合もあります)、細部は現場で職人が技術と経験で加工することもあります。
そのため、建材のバラツキや品質管理や職人のスキル等により仕上がりが一定になるとは言えません。 - ③シロアリ等の害虫被害
- 建物の構造体主要部分が自然(天然)の木材を採用するため害虫被害からは回避できず、定期的な防蟻処理や薬剤散布、メンテナンスが必要となります。
特にシロアリ対策をしなければ最悪の場合は倒壊することもあります。 - ④自然災害には弱い
- 鉄骨系と比較して自然災害、特に気象による災害を受けやすいです。
台風被害が一番の例ですね。但し、鉄骨系と比較して修理がしやすいということも言えますね。 - ⑤燃えます
- メリットで「実は耐火性に優れています」と言いましたが、木材なので間違いなく燃えます。
但し、燃え進むには時間がかかるので耐火という点ではある程度の時間が稼げるのと、ハウスメーカーの技術もあって、施工方法に工夫を凝らしていることも多く、最近では耐火性に優れた住宅も数多く存在しているという意味でメリットで話しましたが、それでも「燃える」というデメリットは話さないといけないですね。 - ⑥防音性は低い
- 木材の性質上、遮音性は低く音は通しやすいです。
屋内での楽器演奏やホームパーティー等では外に音が漏れやすく、外からは例えば道路沿いの家であれば車両の通過する音等が屋内に入り込みます。 - ⑦品質のバラツキ
- 元々が自然の物なので均一化されないということもありますが、木材の管理状態や、建築現場での保存や加工等によって品質のバラツキを招きます。
これらが木造の主な特徴です。やはり全体的な弱さを感じますね。
ただ、ここから木造の逆襲が始まります。
逆襲その1 脱炭素社会が木造建築を後押し
来る2050年のカーボンニュートラル宣言を踏まえて平成22年(2010年)10月に施行された「公共建築物等木材利用促進法」が令和3年(2021年)10月1日に法改正されました。
要は今までは、公共建築物に積極的に木材を使いましょう。から昨年から公共建築物限定ではなく、民間建築物をも含む木材利用の促進を目指す法律に変わりました。
時の政府がグリーン化社会の実現を重要施策と位置付け環境投資で思い切った舵取りをすることになったわけです。
この10年間でも国有地の山林を整備し、木造・木質化建築物を拡大させることで、積極的に国産木材の活用を促し、気候変動問題の原因である二酸化炭素を木材内部に取り込み、長期貯蔵させ温暖化対策に資する施策が昨年より一般住宅にも適用となりましたので、これから木造建築は追い風とも言われております。
以前のコラムで掲載した新国立競技場の屋根木材もこの一環でした。
そして元々平成11年の建築基準法一部改正前後に構造用集成材を鉄骨並みの大スパンまで確保できる研究が進んでおり、今や防耐火木質構造材の開発成功、大型木質構造材の加工技術の進化、接合金物の新技術と開発等、また木材に銅成分を注入することによってシロアリ被害を防ぐ建材等の商品化が耐火・耐震・防蟻に弱かった木造建築を強くしており、そこにこの木促法改正が大きな後押しになっています。
逆襲その2 構造用合板の飛躍的な発展
構造用合板は以前からありましたが、近年より高耐力な合板が開発されており、更に釘のピッチ幅を狭めることで気密性を高めた住宅も登場しております。
しかもこの構造用合板はその名の通り、住宅の屋根、壁、といった主要構造躯体の下地材に普及され建築業界では「期待の耐力面材」と呼ばれる存在です。
更にこの合板、留まること知らず現在は超厚合板(厚さ30mm超え)の開発もされているようです。
これによって耐火性以外に遮音性能や耐久性能がアップしただけでなく、耐候性能(気候変動にも耐え得る)という新しい言葉で表現できるほど高いスペックを誇ります。
逆襲その3 劣化対策等級
劣化対策等級とは、住宅性能表示制度で建物を評価することを言います。
これによって建物の劣化対策がどの程度行われているか?を評価することができます。
等級が高いほど建物は長持ちしますよ。という等級です。
ここでも実は木造の劣化対策等級が優遇されています。
公平に最高等級の3級で各構造を見ていきます。
- 木造の等級3の基準
- 外壁の軸組における防腐・防蟻措置
- 土台の防腐・防蟻措置
- 浴室・脱衣室の防水措置
- 地盤の防蟻措置
- 基礎高の確保
- 床下の防湿・換気措置
- 小屋裏の換気措置
- 構造部材等の基準法施行令規定への適合
- 鉄骨造の等級3の基準
- 構造躯体の防蟻措置
- 床下の防湿・換気措置
- 小屋裏の換気措置
- 構造部材等の基準法施行令規定への適合
- RC造の等級3の基準
- セメントの種類
- コンクリートの水セメント比率
- 部材の設計・配筋
- コンクリートの品質
- 施工計画
- 構造部材等の基準法施行令規定への適合
上の比較表を見て、皆様はどう思われましたでしょうか?検証してみましょう。
- 等級3を取得するには木造がその項目において一番多いですね。片や鉄骨造は一番少なくて済みます。
一見鉄骨造有利に見えます。 - 次に費用面です。まず、鉄骨造の防蟻措置及び防湿・換気措置において措置面積と工期において費用負担増です。
次にRC造ではセメントの種類指定とコンクリートの品質管理や設計や配筋量と製品の規制・維持管理費のコスト増でこちらも費用負担が大きいです。
反対に木造の項目は一見多いのですが、例えばよく皆様が耳にするハウスメーカーさんなら、既に施工工程に組み込まれている内容がほとんどです。
それを70年持たせる施工にバージョンアップさせてしっかりメンテナンスを行うことで取得できる項目です。
つまり鉄骨造やRC造と比較して費用負担面でそんなに大きな増額にはならないようです。 - 結果的には鉄骨造とRC造は従来より手間も費用も工期もかかります。それが建材調達増のコストを呼び価格に反映されます。
一方木造は従来通りに少し手を加えて構造や設備に対する価格満足度や安心・安全を購入者にアピールできます。
逆襲その4 木造の中高層建築・非住宅の需要拡大を政府が後押し
逆襲その1でもお話しした木促法改正には、更に木造を後押しする内容があります。
これは国土交通省の「建築着工統計調査2020年」に基づいた用途別・階層別の木造率について公表されているのですが、1~3階建ての低層住宅について木造率が8割に達する供給率に対して、4階建て以上の中高層住宅及び非住宅建築(鉄骨造やRC造のテリトリーですね)については、どちらも1割にも満たない現状です。
特に非住宅建築においては、1階建てで約19.3%、2階建てで約17.6%、3階建てにおいては約3%にとどまっています。
国はどうやら木材需要の拡大を目指すには、ここにメスを入れたいと判断したようで逆襲その2の技術革新とその3の恩恵を背景に、各地で中高層建築や非住宅建築の木造化を促進する動きがあり、企業や行政が連携して積極的な取り組みが実施されています。
まとめと次回予告
これらの木造の強化によってエピソード2でお話しした鉄骨造が今一番危機感を覚えているのかもしれません。
さて、次回はいよいよVSシリーズに突入していきます。それぞれに一長一短があるのでできるだけ客観的な目線で評価したいと思います。
皆様のツッコミは覚悟の上、雌雄を決したいと思っております。また最終章の投票による総合優勝も楽しみです。
こうご期待!!
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