建物構造対決 Episode2.建築基準法に翻弄される悩める鉄骨造|株式会社R-JAPAN

建物構造対決 Episode2.建築基準法に翻弄される悩める鉄骨造

目次
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建物構造対決Episode2.
建築基準法に翻弄される悩める鉄骨造

日本における住宅供給数の中で一番多いのは木造だと思います。ただ、この分母を収益物件の中での供給数に絞って見れば全国的にも鉄骨造が他の構造の供給数を圧倒するのではないでしょうか?
実際に収益物件の中古市場でも鉄骨造が圧倒的に多いですね。
必ずしも供給数イコール人気の高さと比例はしないと思うのですが、今回は、収益物件ではナンバーワンの鉄骨造の過去にも、現在にも、また将来にも「建築基準法」に翻弄され今なお振り回されていることにフォーカスしてみたいと思います。

鉄骨造について

木造とRC造の中間に位置する鉄骨造ですが、この2極の良いところを埋めるべく存在して欲しい構造なのですが、何故かいつも建築基準法の都合において蔑ろにされている感がとても強いと感じています。それでは裏付けから話していきます。

【耐用年数】

皆様もご存知のとおり、一般的には鉄骨造の法定耐用年数は34年となっています。また法定耐用年数は建築基準法より税務の管轄ではありますが、鉄骨造はこの法定耐用年数と建築基準法の狭間で、もう既に迷える存在に位置付けられています。それは鉄骨の厚みによって法定耐用年数が異なり、軽量鉄骨と重量鉄骨の分類がそれを更にややこしくさせてしまってる点です。
最初からかなり複雑なお話しですので表にしてみます。

鉄骨の厚さ法定耐用年数軽量鉄骨・重量鉄骨
3mm以下19年軽量鉄骨
3mm超え4mm以下27年軽量鉄骨
4mm超え34年軽量鉄骨
6mm超え34年重量鉄骨

皆様、この表を見て「何かおかしい」と感じた方もおられるかと思います。
すこし古いですが「厚切り〇ェイ○○」という芸名でTV出演されていた方のネタのようにいうと…。

考える人

3mm軽量鉄骨で19年、4mm以下軽量鉄骨で27年、4mm超え軽量鉄骨で34年…。
ふむふむ…。
このパターンで行くとどうやら厚さが太くなれば法定耐用年数も増えそうだな!
となるはずが…。
6mm超え(4mm超えたよ)しかも軽量鉄骨から重量鉄骨にスペックアップ!!
が、???法定耐用年数は34年のままって…?

びっくり!

Why 法定耐用年数! Why 建築基準法! どうして年数延びないの?
軽量鉄骨と重量鉄骨の差別化は?
わざわざ重量鉄骨としながら条件は4mmと何ら差が無いの???
建築基準法さん、これって不公平ではないでしょうか?4mmと6mmでは総骨組重量から見ても絶対的に6mmの方が耐力に優れていることは目に見えているのに、どうして耐用年数を34年のままで良しとしたのか?税務とのパワーバランスなのか?と疑ってしまうほどの「謎」です。

そもそも「法定耐用年数」の定義ですが、3つの意味を持っています。

  1. ① 「建物の寿命(耐用年数)」
  2. ② 「減価償却の期間(法定耐用年数)」
  3. ③ 「経済的価値がなくなるまでの期間(経済的耐用年数)」

この3種の構成を持って「法定耐用年数」の意味と意義が成されているはずです!
その最初の「建物の寿命(耐用年数)」と定義しているならば4mmと6mmでは全然違うのでないでしょうか?
なぜならば3mmと4mmでは、その差8年です。1mm違って8年の差なら、2mmだと16年の差があってもいいのではないでしょうか?せめて10年程度の差別化があっても良いとおもうのですが…。
いや、待てよ!これは上にいるRC造からの同調圧力なのか?忖度なのか?ここまで来ると迷走してしまいます。

考える女性

【建築コスト】

当然、木造より強度が高い分、また鉄骨が持つ耐力といったストロングポイントから見た場合に部屋数が多く取れる(土地面積にもよりますが)こともあり、多少の建築コストがかかっても高い収益性が見込まれますね。
最近では軽量鉄骨及びプレハブ住宅では2階建ての住宅やアパートが建築可能で、工場で柱や外壁パネル等の建築部材を大量生産でき、南北に長い日本列島の気候変化にも各メーカーさんの研究と技術によって安定した品質にも関わらず低コストと短い工期で完成できるようになっています。重量鉄骨が条件となる3階建て以上のマンションやビルにおいても同様ですね。
つまり木造並みの建築コストとまではいきませんが、建築コストに関しては木造との距離は縮まっていると言えます。
また、6mm以上の重量鉄骨では、その鋼材の厚みを活かしRC造並みの広い空間を作ることも可能になっています。(筋交いを必要としないラーメン構造ですね)思い切った吹き抜けや1階に車を複数台駐車できるビルトインガレージの実現も可能です。
が…。
建築基準法ではRC造と比較して耐火性に劣る。という理由で常にRC造の前に出ることを許されていません。
※軽量鉄骨では強度補強のため、「ブレース構造」という柱と梁に加えて筋交いを採用する工法が用いられています。

【建物の強度及び耐力面】

そもそも鉄(鋼材)を扱うので、その自重そのものが大きく、それによって階高を増やすことも可能な視点で見ればRC造とそんなに大きな差はないかと思います。
12mmの鋼材を使用して12階程度の階高は技術的には可能なようです。階高だけを切り取ればRC造と遜色有りませんね。
それでもRC造には並べないのが鉄骨です。
※厚さが何ミリだから何階までの建築が可能とか重量鉄骨造だから何階まで可能という構造計算はありません。
建物の高さを追求するには、主体となる構造だけで成立することはできず、地盤や風圧、その土地の法規や条例及び周辺環境への影響も考慮されます。


話は戻りますが、鉄骨造もRC造同様にそれなりの重量がありますので、地盤改良や基礎構造の強度及び耐力が必要となってきます。つまりここでもRC造並みの制限が課せられるのに…。となります。

東京スカイツリーとエンパイアステートビル

ちょっと横道…

  • 東京のスカイツリーは634mの高さを誇る重量鉄骨造です。
  • アメリカのニューヨーク市マンハッタンにありますエンパイアステートビルは電波塔を除いて軒高部分で地上381mの102階建てです。
    102階の床面は地上から373mの高さにあります。しかも1931年4月11日の竣工と言うことは今年で築91年なので驚きです。
    これに留まらず過去には爆撃機の衝突や複数のフロアから同時火災発生を起こしたことでも有名で、キングコングも登っています!?…。鉄骨強し!とおもうのですが…。

鉄骨造のメリット・デメリット

鉄骨造のメリット・デメリット

○メリット

①耐震性が高い
RC造同様、重量鉄骨造においても一定基準の耐震性に優れています。
耐火被膜処理を施せば、耐火性も大幅なアドバンテージを得ることができ、木造よりも火災保険の保険料も抑えられます。
②耐久性に優れている
鋼材使用の建築物ですから強度が高く、それによる耐久性に優れています。
③品質の安定
部材が工場生産になりますので品質にバラツキがなく、安定しており、シンプルな構造から特殊な技術は必要としないにも関わらず完成度が高く、安定しています。
④間取りやデザインの自由性が高い
RC造同様、柱や梁のそれぞれの強度が高いため、使用するその本数が少なくて済みます。
その結果、開放的な間取空間や広い間口の実現が可能になります。

△デメリット

①建築費用が高い
鋼材原価が高い点と、各部材の品質保証を維持するため一度に大量生産できないのもコストに影響されます。
②重量が大きい
RC造ほどではありませんが、それでも重量が大きいのは事実で、それを支える基礎もかなり強固に作る必要があります。
そこに地盤が軟弱なエリアや地盤沈下(特に不当沈下を起こすような土質強度が何種類にも異なる成分で構成されているような場所)、液状化現象の可能性が高い埋立地等においては、これを補強する地盤改良や杭打ち等が必要になるため、全体的な重量増とともに費用負担を強いられます。更に外壁保護も兼ねた磁器質タイルを全面に張るような場合には更にタイルの重量も加算されてきます。
③内部結露の発生が高く、防錆処理が必要
コンクリートを使わないのでRC造のような気密性は期待できず、また木材と違い部材自身(鋼材)が湿度のコントロール機能を持つわけではないので内部に湿気が溜まりやすくなります。
そのため防錆処理は必須で、それを施さないと「サビ」による強度不足となる大きな影響を及ぼします。
④夏は暑く、冬は寒くなりやすい
木材のような通気性や、コンクリートのような断熱性を持たないので、外気温や湿気等の影響を受けやすく木造やRC造と比較して冷暖房といった熱効率はそれほど優れているとは言えません。
上記の結露にも関係しますが、鉄骨造においては防錆処理が必須であると、先ほど話しましたが、もう一つ重要な設備があります。
それが断熱材です。鉄骨造においてこの弱点を補うには、断熱材に頼るしかない!とまで言えるのかも知れません。特に例えば夏の季節においては、外壁表面の温度は70℃を超えるケースがあります。片や室内では冷房を28℃に設定したとします。
外壁と室内壁との温度差42℃にもなります。
一般的には温度差25℃で「壁体内結露」が発生する全ての条件が揃うとされています。
①酸素②低温菌(0~30℃)と中温菌(10~45℃)の発生③飽和水蒸気(水分)が夏で約28℃で飽和量である含水率20%に到達、冬では約10℃で達します。
これらの条件が揃えば「壁体内結露」が発生する条件が整います。
水蒸気の分子は水滴の約250万分の1という細かさで多くの建築建材をすり抜けてしまうので、水蒸気を通し断熱ができる防湿材が施された断熱材が大きな味方になります。
⑤増改築が難しい・解体費用が高い
建物全体が非常に丈夫で強固に作られますので壁を撤去したり、解体する際にはその費用は非常に高いです。

強力な助っ人登場でRC造を猛追

アパートとマンション

最近、密かに増えてきているのが「気泡コンクリート造」という構造をご存知の方もおられかと思います。
絶対王者RC造に打ち勝つために鉄骨造と合体した外壁材。その名はALC外壁です。
ズバリ!耐震性・耐久性・断熱性・防音性能で従来の鉄骨造外壁スペックを上回り、RC造より建築コストが安く、一説にはフルメンテナンスではなく、部分メンテナンスでも60年の耐久性があるというウワサもあります。
このメリットだらけのような建材の登場でRC造並みのスペックを持つことになる最近の鉄骨造は、建築コストが安いことから新築の収益物件での建築には、この建築コストを家賃設定に反映させる割合がRC造よりも従来の鉄骨造よりも低いのと、入居者にとってもRC並みの耐震性・耐久性・断熱性・防音性能があることから、収益物件所有のオーナー様の建替えニーズで着々と実績作りが進行しています。
当たり前ですが、ALC外壁は建築基準法で認められています。やっと建築基準法が鉄骨造に振り向いてくれた?

まとめと次回予告

いかがでしたでしょうか?鉄骨造は法定耐用年数でRC造に比べ圧倒的不利を強いられ建築基準法では常にRC造の次に位置付けられていますが、何とか反撃のチャンスが到来したのかなぁ。という感じです。
が…。もっと大きなストライドで走って来ている影をまだ鉄骨造は知らないのかも?どうする鉄骨!

それでは前回と次回以降の予告をここでお知らせ致します。

こうご期待!!

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